東京地方裁判所 平成9年(行ウ)234号 判決 1997年10月31日
愛知県瀬戸市幡野町八一-一一四
原告
丸山邦典
東京都千代田区霞が関三丁目四番三号
被告
特許庁長官
荒井寿光
主文
一 本件訴えをいずれも却下する。
二 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
一 本件は、「特許庁が昭和六一年第六〇〇五八号判定請求事件につき昭和六二年二月二六日付で、及び平成六年第六〇〇〇八号判定請求事件につき平成六年八月二日付でそれぞれした各判定を取り消す。」との裁判を求めるものである。
原告の請求の原因は、要するに、原告が、その有する特許権に基づき、特許庁に対して、昭和六一年第六〇〇五八号判定請求及び平成六年第六〇〇〇八号判定請求をしたところ、各判定請求事件について判定がされたが、その内容は特許法に違反するものであるから、各判定の取消しを求めるというものである。
二 しかしながら、特許法七一条所定の判定は、特許発明の技術的範囲を明確にする確認的行為であって、特許権の内容に変更を加えるものではなく、判定の結果が、特許権の侵害を理由とする差止請求や損害賠償請求等の訴訟において、特許庁の審判官の合議体が公正な審理を経て行ったものとして、事実上尊重されることがあるとしても、それらの訴訟において既判力を及ぼすわけでもなく、裁判所も判定の結論や理由に拘束されるわけではないから、結局、判定は、特許庁の単なる意見の表明であって、鑑定的性質を有するにとどまるものと解すべきである。
そして、行政事件訴訟法上、処分の取消しの訴えの対象は、「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」であるところ(同法三条二項)、右のような性質を有するに過ぎない特許法上の判定はこれに当たらない。
三 したがって、本件訴えはいずれも不適法であり、その欠缺は補正することができないものであるから、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法二〇二条を適用してこれを却下し、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 西田美昭 裁判官 八木貴美子 裁判官 沖中康人)